新型コロナウイルスの影響で突然、臨時休校要請が発表されたのが、3学期の期末テスト最終日の前日夜。いつ再開できるか見通せない臨時休校が始まり、結果的に3カ月に及びました。その間、兵庫教育大学附属中学校では、生徒の「学びの保障」をどう確保するか、全職員が何度も話し合い、できることから行ってきました。
本校では臨時休校中、各教科の担当教員が課題プリントなどを作って生徒に配ってきました。新型コロナと同様、100年前、世界的に大流行した「スペイン風邪」について報じた朝日新聞の記事を引用、世界全体および日本で多数の人が亡くなったことや、当時の政府が呼び掛けた対策が「マスク着用」など、今と変わらないことなどを、3年生向けの通信で紹介したケースもありました。
その頃、全国各地の先進的な学校では、双方向のオンライン会議形式の授業や、授業の動画を教師自ら制作しネット配信しているといったニュースが新聞などで取り上げられていました。本校でもそのような取り組みができないか教員間で話し合いを進め、20代後半~30代前半の教師を中心にプロジェクトチームを立ち上げ、動画配信やオンライン授業の実施に向け、打ち合わせや研修を行ってきました。
そして、マイクロソフト社のOffice365の中にある「Sway」(プレゼンテーションソフト)と、「Forms」(アンケート、問題集計ソフト)」を活用することを決めました。「臨時休校に伴う特設ホームページ」を開設し、4月20日からは教科ごとに課題やプリント、問題、オリエンテーション動画を載せた「非同期型」授業を試行しました。この中には、新型コロナで亡くなった1千人の名前や享年、一言紹介を載せた、ニューヨーク・タイムズ紙の紙面を紹介したケースもありました。
「Sway」で作成したホームページからプリントや問題をダウンロードでき、「Forms」では出席を確認したり、体調管理調査を行ったりすることもでき、体温が高かった生徒にすぐ連絡する対応もとりました。さらに、5月11日からは「非同期型」ですが、全教科で週1回以上の動画を配信し、「特設ホームページ」を使いオンライン授業を開始しました。
数学科の動画は、教師2人が教師役・生徒役として登場し、質問に答えながら進めたり、これを見た生徒からの回答に次の授業で答えたりするなど、双方向を意識した内容です。体育科の動画は、体育科教員が生徒たちの運動不足解消に役立つダンスなどを披露したりしていました。それぞれの動画へのアクセス数を見ると、多くの生徒が、本校教員が作成した動画を見て学習を進めていることが分かりました。質問したいときは、「Forms」を利用して行っていました。
学校再開後もしばらくは分散登校のため、引き続き、オンライン授業を行っている教科もあります。臨時休校で登校できない生徒のために、われわれ教員は何ができるのか―。苦手なことにも果敢に挑戦し、各教員が試行錯誤しながら取り組んでいます。なお、ネット環境により、十分に動画配信やオンライン授業を見ることができない生徒には学校再開後、放課後の時間を使って学校で見られるようにしています。今後、ウイルスの流行の第2波、第3波に備え、「非同期型」と「同期型」の融合も視野に、オンライン授業の深化・充実に取り組んでいきます。
NIEについては現在、新聞3紙の提供を受けています。当面は「三密」とならないよう配慮しながら、廊下や図書室に閲覧場所を設置して、生徒がいつでも新聞を手に取って読めるようにしていきます。そして、生徒一人一人が新型コロナなどに関心を持ち続け、多面的・多角的に考えることができるようになってほしいと考えています。
大山 隆史(兵庫教育大学附属中学校校長)(6月19日)